元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

「次期皇帝のフェルディナンド殿下が子を残せる可能性は絶望的だ。そしてフランツ・カール殿下は性格上、帝位継承を拒否するだろう。だとすると、フェルディナンド殿下の次に帝冠を抱くのは彼女の子になる可能性は大きい。……未来の皇帝だ。教育の重みが違ってくる。母親が成長するのを待っている余裕はない」

……やはりクレメンス様の先見の明はすごい。すでにゾフィー大公妃の子が帝位につくことを予測している。

「でも……ゾフィー様が納得するでしょうか?」

「個人の意思など、この王宮に暮らす者には関係ないのだよ。彼女が生むのは彼女の子供ではない。このオーストリア帝国の未来そのものだ」

私は大きく吐き出しそうになった溜息を、口を引きしめてこらえた。

つくづくと彼と自分の器の大きさの違いを思い知らされる。

クレメンス様が見ているのは、いつだってこのオーストリア帝国とヨーロッパの未来だ。宰相として何をどう判断することが未来の確実な平和に繋がっていくか、彼は常に考え、その方針は決してブレない。

革命を徹底的に弾圧するのも、自由主義の芽を摘むため厳しい検閲を設けることも、未来の皇帝を母親の手から引き離す画策をすることも。ヨーロッパの平和にとって必要なことだからクレメンス様は遂行する。例え万人から憎まれると分かっていても。
 
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