元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
劇場で会って以来、ゾフィー大公妃は私を舞踏会や夜会で見かけるたびに話しかけてくるようになった。
「だって私、フランソワ以外とはあなたとしか踊りたくないんですもの」
そう言って彼女は、ライヒシュタット公が一緒じゃないときは私にべったりくっつき離れない。
どうやらゾフィー大公妃はウィーンの人々を相当毛嫌いしているようだ。大公妃として一応はあちこちの舞踏会に顔を出すけれど、ダンスのお誘いからもご夫人達のお喋りからも逃げ回っているらしい。
「ホーフブルクの人達ってほんっと意地悪なのよ。私がバイエルンから連れてきたオウムを取り上げてしまったの。オウムにうつつを抜かしていないで、早く子作りに励むようにって。ひどいでしょう? 信じられないわ。バイエルンにはそんな意地悪をする人はひとりもいなかったのに」
「はあ。それはひどいですね」
ワルツを踊りながら、ゾフィー大公妃はいつも宮廷での暮らしを嘆いて私に聞かせる。彼女曰く、話を聞いて慰めてくれるのは私とライヒシュタット公しかいないのだそうな。
そうして今夜も踊りながらたっぷりと不満をぶちまけた彼女はようやくスッキリしたのか、音楽が終わると同時に私の手を引いて次の間でパンチを飲み晴れやかな笑顔を見せた。