元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「そうよ。大公妃としてイタリア情勢の視察を陛下から仕ったの。旅は嬉しいけれどお喋りする人がいないのは寂しいじゃない? だからあなたが同行してくれたら最高だと思うんだけれど……」
大公妃のお喋り相手として同行するかはともかくとして、イタリアの視察にはぜひ行きたいところだ。
クレメンス様やゲンツさんもイタリアの動向は常に気にしているし、宰相秘書官としてイタリア情勢の視察を買って出るのならば許可は出やすいだろう。
(ひとりで異国へ出張するのは初めてだけど……秘書官になってもうすぐ二年だもんね。経験を積むのにも悪くない頃合いじゃないかなあ)
そんな風にすっかり乗り気で考えていると、ゾフィー大公妃がチョイチョイと手招きして、顔を寄せた私に小声で耳打ちした。
「マントヴァに、フランソワのお母様……パルマ公もいらっしゃるのよ。私の結婚式のときパルマ公は体調が優れなくて来られなかったでしょう? だから今回の旅は新しくハプスブルク家の一員になった私の顔見せの意味もあるの」
「……なるほど」
「私ね、パルマ公にお願いするつもりよ。フランソワが寂しがってるから、ウィーンに会いに来てくださいって」