元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
小声で私に語ったゾフィー大公妃の瞳は、強い意志に燃えていた。愛する人の力になりたいと願う、恋する乙女特有のものだ。
「フランソワはとっても、とーってもお母様に会いたがっているのよ。まだ十四歳ですもの、当然だわ。なのにパルマ公はいつも体調が悪いからって帰って来ないんですって。可哀想なフランソワ! オーストリアから出してもらえないのに、お母様の方から会いに来てくださらないなんて!」
彼女の言う通り、ライヒシュタット公の母であるパルマ公はなかなかこのウィーンに帰って来ない。手紙はよく寄越しているようだけれど、彼女が最後にウィーンに帰ってきたのはもう五年以上前のことだとか。
(息子に会いたくないのかな。あんなに立派に育ってるのに……)
以前ライヒシュタット公がヴェローナ会議に行った私を羨ましがったことがあった。あれは出席していたパルマ公に会いたかったのだと、今ならば分かる。
「分かりました。僕も同行できるように宰相閣下にお願いしてみますね。僕もライヒシュタット公をお母様に会わせてさしあげられるよう協力したいです」
ますますイタリアに行きたくなった私は是が非でも許可を得ようと心の中で意気込む。
私の前向きな返事を聞いたゾフィー大公妃は、「嬉しい! 一緒にフランソワのために頑張りましょう!」と、大輪の花が綻ぶような素晴らしい笑顔を見せた。