元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
――五月。
イタリア視察の許可が出た私は、ゾフィー大公妃と共にイタリアのマントヴァへとやって来ていた。
北イタリアは現在オーストリアの支配下にある。各国の主要ポジションにパルマ公であるマリー・ルイーゼ王女を始め、皇帝の弟である大公などハプスブルク家の者やオーストリアの行政官を配置している状態だ。
四年ほど前にミラノとピエモンテでイタリア独立を叫ぶ革命軍が蜂起したけれど、徹底的に鎮圧されたせいか、それともミラノよりはるか東にあるマントヴァにはあまり影響がないのか、特に不穏な空気は現在感じられない。
ハプスブルク家の紋章がついた馬車は行く先々で歓迎され、旅の解放感からかゾフィー大公妃も沿道で旗を振る人々に微笑んで手を振り返していた。
マントヴァの公館では集まったミラノやヴェネチア、マントヴァ、そしてパルマの各要人らから話を聞くことができた。
オーストリアの定めた検閲について多少の不満が芸術家達からあがっているものの、それ以外はとりたてて問題はないようだ。
特にパルマ公国は異国の王女が君主についているにも関わらず、民は熱烈に彼女を指示し、北イタリアきっての平和と活気を保っているとのことらしい。