元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
パルマ公はお上品に膝を曲げ軽く挨拶をすると、さっさと踵を返して舞踏会場から出ていってしまう。まるでゾフィー大公妃から逃げるように。
「そ、そんなあ……」
愕然として立ち尽くすゾフィー大公妃をその場に残し、私はパルマ公の背を追いかけて走り出した。
会場を出て廊下を駆けるも、彼女の姿はすでにない。玄関口まで走っていくと、慌てるように馬車へ乗り込もうとするパルマ公と側近らしき女性を見つけた。
「待って! 待ってください!」
走ってきた私を見つけた側近が驚いたように目を瞠って、パルマ公の身体を馬車に押し込む。そして自分も大急ぎで馬車に乗り込み、扉を勢いよく閉めた。
やっぱりパルマ公は私達から逃げ出そうとしているのだ。
何故かは分からないけれど、とにかく捕まえなくてはと思い、私は全力ダッシュで玄関ポーチを駆け抜けると走り出そうとした馬車の窓へとジャンプして飛びついた。
「パルマ公! 少しでいいんです、お話をさせてください!」
「きゃあっ! 危ない! 止めて、止めて!!」
強引に窓にしがみついてきた私を見て、パルマ公が慌てて馬車を停めさせる。振り切られるかと思ったけれど、私を心配してか馬車を停めてくれるなんて案外優しいなと感じた。