元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「……もう、お馬鹿さんね。ここは戦場じゃないのよ。身を呈して怪我をしたって誰も褒めてはくれないわ」
馬車を停め、呆れながらもパルマ公は扉を開いてくれた。
我ながら馬鹿なことをしたなと反省するけれど、こんな滅茶苦茶な手段を取った私を無礼だと怒らなかった彼女の反応に、内心驚きと感心を抱く。まるで子供を優しく叱るお母さんみたいな印象だ。
「すみません……、でも、ありがとうございます」
頭を下げながら馬車に乗り込むと、パルマ公の隣に座っていた側近の女性が私を見て実に渋い顔をした。
パルマ公は馬車の御者に「その辺りをゆっくり回ってちょうだい」と命じると、私に向かって「それで、お話って?」と言葉を促した。
「ええとですね……実は先日パルマに伺ったのですが、他国に類を見ないほど福祉が充実し民が活気づいていまして、大変感動いたしました。皆、口を揃えてパルマ公を褒め称えております。大人から子供まで皆が安心した顔で暮らしていて……本当の平和とはこういうことを言うのだなと、胸が熱くなりました」
私の話にパルマ公はほんのりと頬を染めると「まあ、ありがとう」と可愛らしくはにかんで答えた。