元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「私ね、パルマが大好きなのよ。だからパルマの国民にはうんと幸せになって欲しいわ。そのためには私のためのお金なんていらないくらいよ」
嬉しそうに語る彼女の言葉に嘘はない。実際、彼女はパルマ公に就任したとき就任式を中止して、そのお金を貧しい人達へ下賜したそうなのだから。
「でも、パルマが豊かになったのはこのナイペルク伯爵夫人のおかげよ。私は政治にはあまり聡くないから、相談役の彼女が私の案を聞いて具体的な政策にしてくれるの。そこら辺のお役人の男なんかより、ずっと頭がいいのよ」
そう言われてパルマ公の隣に座っていた彼女は「恐縮です」と軽く頭を下げる。
そこで私はやっと、彼女がヴェローナでもパルマ公についていた側近の女性だと思い出した。
見たところ三十代半ばくらいだろうか。少女らしいパルマ公とは対照的で、凛々しく少し厳しそうに見える。
ナイペルク伯爵と言えば確かナポレオンとの戦いで命を落としたオーストリアの将軍だ。存命時にイタリアで軍政官もしていたから、夫人もイタリアに詳しく、パルマ女王に就任したマリー・ルイーゼの相談役として抜擢されたのだろう。