元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
冷静で理知的そうな彼女の姿を見て、私はなんとなくパルマがこれだけ豊かになったからくりが分かった気がした。
パルマが大好きで粉骨砕身してでも尽くしたいパルマ公と、その希望を実現できそうな具体案にしていくナイペルク夫人。ふたりは力を合わせてパルマを切り盛りしているのだ。
ナイペルク夫人のことをパルマ公は心から信頼しているのだろう。彼女を見るパルマ公の瞳は安心と親愛に満ちている。
そしてナイペルク夫人もまた、パルマ公を敬愛のこもった眼差しで見つめ返していた。
「――それで? わざわざ馬車に飛びついてまでしたかったお話がそれ?」
パルマ公の方から本題を促され、私は表情を引きしめると思いきって口を開いた。
「……ウィーンに帰ってきていただきたいんです。ライヒシュタット公がパルマ公に、お母様に会いたがっています」
私の言葉を聞いて、悲しそうに眉を顰めたのはナイペルク夫人の方だった。パルマ公は表情を変えず「そう」と小さく言ったきり扇を広げて口もとを隠してしまった。
「パルマ公が大変お忙しいのは分かっております。けど、せめて夏季休暇の間だけでも、ウィーンにお戻りになってはくださいませんか?」