元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「そんなはずありません! 幾つになったって母親は特別な存在です! ウィーンの宮殿で彼が寂しくしていることはパルマ公もご存じでしょう? どうして自分の息子に会ってあげないのですか」
あまりにも冷たい態度しか示さないパルマ公に、私の口調にだんだん熱がこもっていく。
ライヒシュタット公はオーストリアから出ることを許されない籠の鳥なのだ。そんな彼にどうしてたったひとりの母親が会いにいってあげないのか、理解できない。
「お願いです、どうかウィーンにお戻りください。半月……いいえ、一週間だけでもいいんです。彼が立派に成長した姿をご覧になってあげてください! パルマ公は……マリー・ルイーゼ様はライヒシュタット公の母親ではないですか!」
次の瞬間、パルマ公の持っていた扇が私の顔に向かって飛んできた。
ぶつかっても痛くはなかったけれど、こちらを怒りのこもった瞳で睨みつけるパルマ公の形相に驚かされた。
「まだ私に義務を押しつけるつもり……? もう私がウィーンでするべき役目はすべて終わったのよ……! 私はオーストリア王女でもフランス皇妃でもナポレオン二世の母親でもない! 私はもうパルマの女王なのよ!!」
どうしてそんなことを言うのか、どうしてそんな憎しみに染まった表情をするのか、何も分からず私はただ呆然とする。