元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
「きみはライヒシュタット公とゾフィー大公妃に会うことをもうやめなさい。これ以上彼らの影響を受けることは、きみの将来のためにならない」

大公妃の子供の話どころか、ふたりに会うなと釘を刺されてしまい、私はショックと驚きで立ち竦む。

「ツグミ。きみは行政官として悪くない素質を持っている。できることならこの先、ゲンツと共に私の片腕になって欲しいくらいだ。――けど。今のきみは道を誤りかけている。もう一度国家とは何か、王族とは何か、そして今のヨーロッパに必要なのはなんなんのか、考え直したまえ」

厳しい口調で叱責され、思わず俯きたくなってしまった。

尽くしてきたボスに失望されることは、秘書としてもっとも悲しいことだ。

オーストリア帝国の宰相としてヨーロッパを牽引し、誰よりもヨーロッパの平和のために日夜尽力しているクレメンス様を、私は心から尊敬し憧れている。

時には冷酷な判断を下し非難され誰かに恨まれようとも、クレメンス様の選択は結果的に正しい。私はそれを分かっていながら、感情的で甘いことを言ってしまったのだ。

きっと、「三年も側にいながらいったい何を見てきたんだ」ってガッカリしているだろう。
 
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