元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
「私とプロケシュ少尉はね、フランソワをギリシャ王に推薦することを考えているの」

「ギリシャ?」

狙いはフランスではなくギリシャだと言われて、私はハッとする。

『そしてギリシャが独立を果たした暁には、我がハプスブルク家の者を国王の座に据えることで欧州のパワーバランスの均衡を図るべきです』

――私がヴェローナ会議のときにクレメンス様に提案した言葉だ。

あれからギリシャはオーストリア・ロシア・プロイセン・イギリスの力を借りて見事独立を果たした。そして今、新しい国王に誰を据えるかまだ決まっていない。

フランスはじめ、あちこちでライヒシュタット公を新国王に迎えたい声があがっているけれど、一番問題がないのがギリシャだろう。

オーストリアを始めとしたウィーン体制同盟国が支援し独立した国なのだ。他の独立国とは事情が違う。トルコへの牽制のためにも、ウィーン体制同盟国から王を出すのが望ましいはずだ。

(確かに……ギリシャ支援でオーストリアの力は大きかった。ハプスブルク家からギリシャ王を出したとしても、他の国は反対しないかも。それに口煩いロシアとプロイセンは、距離的にギリシャは遠すぎる。一番近いオーストリアが支配下に置くのが適当だ)

フランスと違い、いきなり現実味を帯びてきたギリシャ王の話に、私の胸がドキドキと高鳴る。高揚なのか危惧なのか、自分でも分からないけれど。

「私達、皇帝皇后両陛下へギリシャ王の案を上奏してみようと思うの。皇后陛下は私のお姉様だし、皇帝陛下も孫であるフランソワのことは内心とても可愛く思ってらっしゃるもの。きっと上手くいくわ。……ただね」
 
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