元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「……ゲンツさん、は……?」
頭がぼんやりするのは、強い鎮痛剤を使われたせいだろうか。
上手く考えられないけれど、あれからふたりがどうなったのか気になって、真っ先にそれを尋ねた。するとクレメンス様は少し寂しそうな微笑みを浮かべたあと、手の平で私の両目を覆った。
「決闘はしないよ。だから今はよけいな心配をせずに休みなさい」
それを聞いて、心の底から安堵した。
「よかっ、た……」
安心したせいか、再び眠気が襲ってくる。
――もう一度落ちた眠りの中で、私は大きくて武骨な手にグシャグシャと頭を撫でられた気がした。
乱暴だけれど優しいそれは、胸が切なくなるような温かさに溢れていて。
次に目が覚めたとき部屋には誰もおらず、花瓶に愛らしいゼラニウムの花が活けてあった