元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
「確かに、司令部は逃げも隠れもしないな。しょうがない、ゾフィーをあまり泣かせたくないし一回帰るとするよ」

ようやく承諾を得られて、私は心の中で「やった!」と万歳する。

「それに、僕が帰らないとツグミもまたここへ来ちゃいそうだからね」

「え?」

「ゾフィーから手紙で聞いたよ。女の子なんだって、あんた。女の子のくせにペストの渦中に飛び込んでくるのも、僕はどうかと思うけどね」

彼にも女であることがバレていたのかと、なんとも気まずいような恥ずかしい気持ちになった。しかも『女の子』って……。私もうアラサーなんですけど。

水が合っているせいか、こちらに来てからあまり手入れができていないにも拘らず、私は相変わらず十八の青年でも通りそうな見た目だ。けど若く見えても実際は三十の山を越えた妙齢なので、女の子呼ばわりされても複雑な気分になる。

それはさておき、私が女と知っても彼はあっけらかんとしいてるなと思った。ゾフィー大公妃もそうだったけれど、今までも薄々男でないことを彼も感じていたのかもしれない。

「僕は女の子には優しいからね。ゾフィーも泣かさないし、ツグミもペストに巻き込まれないようにするよ」

「それはどうも……、ありがとうございます」

からかうようにウインクして笑ったライヒシュタット公に、この少年はとことん人たらしだなと感じた。
 
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