元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
そんな折、ライヒシュタット公と侍医が激しく言い争う出来事があった。
身体はすっかり良くなったのだから軍務に戻らせろと主張するライヒシュタット公と、許可できないという侍医のぶつかり合いだった。
十月にハンガリー第六十連隊が先導する閲兵式があるので、一刻も早く訓練に戻りたいらしい。
確かにここ最近、ライヒシュタット公の顔色はいい。一時的なものではないかという危惧はあるけれど、シェーンブルンに戻って来たばかりのときよりは、かなりマシだ。
皇帝陛下もゾフィー大公妃も不安はあったけれど、このままでは彼がこっそり王宮を抜け出しかねないと思い、軍務に当たることを許可した。ただし、閲兵式が終わったら療養に入ることを約束して。
――ところが。
責任感の強さと人並外れた努力家な性格があだになったのだろう。訓練が遅れた分を取り戻そうと早朝から夜遅くまで軍務に励んだライヒシュタット公の身体は、あっという間に以前より悪化していった。
そしてハラハラしたゾフィー大公妃達と多くの市民が見守る中おこなわれた閲兵式は、指揮官を務めたライヒシュタット公が式典の途中で血を吐き、強制的にシェーンブルン宮殿へと戻されるという最悪の事態で幕を閉じた。