元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
本懐を遂げられなかったライヒシュタット公の悲しみと苦しみは、とても見ていられなかった。

いつだって笑って「大丈夫だよ」と言い続けていた彼が、初めて自分の身体を恨み罵倒した。

「何が鷲の子だ! 何がナポレオン二世だ! こんな身体で満足に指揮も取れず、醜態をさらしているだけじゃないか! 僕はどこまで神様に見放されてるんだ!」

侍医に向かってそう叫ぶライヒシュタット公の掠れた声は、ドアの外にまで聞こえた。

自分の不甲斐なさを受けとめきれず荒れるライヒシュタット公の姿に、多くの人が胸を痛めたのは言うまでもない。特にゾフィー大公妃は何度も涙を流し、部屋でひとり悲嘆に暮れた。

「ツグミ、どうしましょう。私、どうしたらいいの。あの子に何をしてあげればいいの」

愛する人の命の灯火が揺れては小さくなっていくのを見続けるのは、いったいどんな気持ちなのだろうか。

私は顔を覆って泣くゾフィー大公妃の背を撫でながら、「大丈夫です、きっと大丈夫ですよ」と慰めにもならない言葉を紡ぐのが精いっぱいだった。



「ライヒシュタット公をイタリアに静養に出しましょう」

十月のある日。私は皇帝陛下にそう提案を上奏した。

医師団の見立てによると、これから寒さが厳しくなるオーストリアより、温かいイタリアで過ごした方が彼の身体にいいのだという。
 
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