元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
やっぱり私は死んでしまったのだ。もし助かったというのならここは日本の病院でなくてはおかしい。けれどあいにく、その気配はさっぱり感じられない。

考えているうちにどんどん頭が覚めていった私は、意を決してえい!と瞼を開く。そして、確信した。

(うん、やっぱり天国だったわ)

目に映ったのは病院の無機質な天井ではなく、精緻な浮き出し模様の施された芸術的な天井。瞳をぐるりと動かせば、ダマスク柄の壁紙に囲まれただだっ広い部屋に、クラシカルインテリアの数々。おまけに大理石の暖炉では火が赤々と燃えているのが見えた。

ヨーロピアンクラシックな部屋にドイツ語を話す天使か。実家は一応仏教の檀家だったはずだけれど、どうやら私はそちらの極楽には行けなかったらしい。

まあいいやと思いながら身体を起こす。上半身が布団から出るとヒヤリと外気を感じ、私の口から大きなクシャミが出た。

「……っくしょん!」

それを聞きつけたのか、部屋の扉が開き、廊下で会話をしていたと思われる男女が入ってきた。

「お目覚め……ですか?」

恐る恐るといった様子でこちらに近づいてきた男女は、やっぱり白衣など着ていなかった。

この部屋に似つかわしいドレスとテイルコート姿。そして顔立ちは西洋人。

「はい、目が覚めました。っていうか、ここどこですか? 天国ってのは分かるんだけど、私日本人なんです。配属する国間違えてませんかね?」
 
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