元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
会議室で自分の机と筆記用具を準備していると、侍従に案内されて軍服姿の男性が部屋に入ってきた。

アラフォーといったところだろうか、真面目さがそのまま渋さになったような『苦み走ったイイ男』という言葉がピッタリ合う風貌だ。

黒髪を綺麗に後ろになでつけ、ぴしりと背筋を伸ばした姿はいかにも軍人らしい。白い軍服に幾つも勲章がついているところを見るに、階級の高い人なのだろう。

その人がこちらに目を向けたのが分かったので、私はすぐさま彼のもとへ向かうと折り目正しく頭を下げた。

「はじめまして。僕はツグミ・オダ=メッテルニヒといいます。クレメンス様の遠縁にあたる者です。本日は議事録係を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」

「なるほど、あなたが噂の『ツグミ』か。最近社交界ではあなたの名が飛び交っている。宰相閣下の秘蔵っ子はアジアの島国から来た子だと」

マジマジと私の姿を見ながら軍人さんはそう言い、それからこちらに手を差し伸べてきた。

「私はヨーゼフ・ラデツキー。あなたがこれから王宮に出入りすることになれば、顔を合わせることもあるだろう」
 
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