元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
(この人がラデツキー将軍……!)

その名前はこの間オーストリアの歴史を調べていたときに出てきたから知っている。

ラデツキー将軍。ナポレオンにとどめを刺したライプチヒの戦いでも活躍し、今から二十六年後に起こる北イタリアの独立運動を鎮圧したオーストリアきっての名将軍だ。

彼を称えて作られた『ラデツキー行進曲』は有名で、私でさえ元の世界で耳にしたことがあるくらいだ。

それにしても……やっぱりこの人も年齢がズレている。電子辞書によると確か今は六十半ばくらいだったはずだ。

「ラデツキー将軍閣下ですね。ご活躍は聞き及んでおります。お会いできて光栄です」

不審感を抱かれないよう敬意を籠めて手を握り返せば、ラデツキー将軍は緑色の瞳をかすかに細めて見せた。

やがて会議室には続々と人が集まってきて、挨拶をしているうちに席が埋まった。

そして最後にクレメンス様とゲンツさんが部屋に入り、話し合いが始まる。
 
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