元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
(うわぁ、懐かしいなあ、この雰囲気。日本で秘書やってたときを思い出しちゃう)
オフィスの無機質な会議室とは違い、シャンデリアにダマスク織のカーペットにやたら装飾の施されたテーブルとイスという華美な会議室だけれど、組織のトップが集まって向き合うこの雰囲気はどこも同じに感じる。
やはり私は根っからの秘書なのだろう。気分が高揚し自然と背筋が伸びた。
今日はどうやら財政関係の会議のようだ。以前ゲンツさんが言っていた通り、オーストリアの公庫はとても厳しいようで、財務大臣の人がずっと眉間に皺を刻んでいる。
「ピエモンテの戦いは我が国に大打撃を与えた。そう、我が国の国費に!」
「何度も同じことを言わせないでくれ、スタディオン大臣。イタリアの革命の芽は早急に摘まなくてはいけない。ましてやロシアに介入の隙を与える訳にはもっといかないんだ」
オーストリアは昨年、イタリアで起きた革命運動を鎮圧するために二度も軍隊を送っている。革命軍はあっさり壊滅したものの、再興中のオーストリアにこの軍事費は痛手だ。公庫は空っぽなうえに、ロスチャイルド家から借金までしたという。
もう使ってしまったものは仕方ないのだけれど、公庫を預かる財務大臣としては軍を出せと命じたクレメンス様を責めずにはいられないのだろう。
「そもそもあんな足並みも揃っていない寄せ集めの革命軍に、二万も兵を送るなど無意味だったのだ。一万……いや、五千でも十分だったのではないのか、ラデツキー将軍?」
クレメンス様に文句を言ったところで埒が明かないと思ったのか、スタディオン大臣は今度はラデツキー将軍を責め立てる。とばっちりもいいところである。