元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「お言葉ですが、弾圧に乗り出そうとしていたロシアは九万の兵を用意していたそうです。それに比べてわが軍の二万という数は決して過剰だとは思いませんが」
ラデツキー将軍にまでやりこめられて、ついにスタディオン大臣はハァと大きなため息をついて肩を落とした。
「……イタリアのことはしょうがない。けど、スペインとギリシャに我が国が出せる軍費はないことは、肝に銘じていただきたい」
今ヨーロッパで問題視されている革命運動はイタリアだけではない。フランス支配下にあるスペインと、トルコの支配下にあるギリシャでも噴煙が上がっているのだ。
イタリアはオーストリアの支配下にあるため、イタリアで起きた革命をオーストリアが鎮圧するのは当然だ。しかしスペイン、ギリシャは管轄外である。スタディオン大臣としては管轄外なのだから手を出すなと言いたいところだけれど、オーストリアがウィーン体制の中心国である以上まるっきり知らんぷりという訳にもいかない。
クレメンス様は呆れたように肩を竦めて見せると、「そうならないためにヴェローナ会議を開くんじゃないか」と首を横に振りながら言った。
けれどスタディオン大臣の眉間の皺は消える訳もなく。
今度はヴェローナ会議に掛かる費用について、喧々囂々と話し合いが続いた。