元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
それから三時間後。

会議は終わり、私は清書し終えた議事録の提出をしようと、クレメンス様の執務室へと向かっていた。

一階の廊下を歩きながら窓の外を眺め(もうすっかり夕方だな)などと思っていた私の目に、ある光景が飛び込む。

(……あれは……ラデツキー将軍?)

庭木に囲まれた中庭のベンチに、ポツリとひとりぼっちの人影を見つけた。薄暗くなっていく周囲にも構わず、背を丸め何か深く考えているように見える。

声をかけようかどうしようか迷って、私は足を中庭へ向けた。

大きな責任を抱える立場の人というのは、真面目であればあるほど疲弊しているものだ。その苦労が活力となる人や、お酒や趣味などで発散できる人、或いは責任を負担だと思わない強靭なメンタルの持ち主ならば問題はないけれど、そうでない人も一定数いる。
 
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