元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
翌日より、会議は本格的に始まった。
実際話し合いのテーブルに着けるのは主要国の代表だけで、外交団、使節団、陳情団体、それに接待委員会らは傍聴席での参加となる。
私もクレメンス様が手配してくれたおかげで傍聴席で会議を見ることができた。
メインとなる議題は、ブルボン朝王政の支配下にあるスペインの革命問題と、トルコ支配下にあるギリシャの独立問題。
スペイン問題についてはフランスが干渉し革命軍を鎮圧することが決まった。自らも干渉してヨーロッパでの影響力を大きくしたいロシアは不満そうだったけれど、それを除けばあっさり話し合いは済んだと言ってもいいだろう。
ただしギリシャ問題に関しては、そう簡単にはいかないようだった。
ウィーン体制は王政を推し進める正統主義だ。独立や共和政、革命はヨーロッパの平和を乱すものとして、鎮圧すべきと考えられている。
けれど、ギリシャに対するトルコの行き過ぎた暴政には各国が同情していた。
私には分からないけれど、古代ギリシャ文化というのはヨーロッパ人のある種の憧れなのだそうで、はっきり口に出さずとも各国ギリシャを応援したい気持ちが見え隠れしていた。
それに加えロシアとギリシャは同じ教義・教理を持つ正教会を信仰している。ロシアが長い時代対立関係にあったトルコよりギリシャに肩入れしたいのは当然なのだろう。
要は、ウィーン体制としては独立・革命を抑えなければいけないけれど、心情的には皆、ギリシャを応援したいというジレンマに陥っているのだ。
会議期間目いっぱいまで話し合われたけれど、結局最善と言える解決策は見つからず、クレメンス様と英国カッスルリー外相の出した「トルコの自制を待つ」という結論に至った。