元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
最後の会議も終わり、いよいよ明日はヴェローナを発つという夜。

公館では夜通し舞踏会が開かれて会議のフィナーレを飾っていた。

ヴェローナでの日々を惜しむように各国の参加者が集い、会場は大いに賑わっている。

私も参加し、拙いながらもだいぶ慣れてきたワルツを楽しんだ。

相変わらず日本人は珍しいようで、色々な人達に話しかけられた。特にロシアのアレクサンドル皇帝は珍しもの好きな人のようで、それはそれは沢山の質問を浴びせられ、最後には「うちの国へ来ないか」と誘われたほどだった。

そんな風に楽しい時間を過ごし宴もたけなわになってきた頃、少し神妙な顔をしたゲンツさんに呼ばれた。

素直に駆けつけると、ダンスで賑わうホールの片隅でクレメンス様ともうひとりの男性が長椅子に座って私を待っていた。

いかにも知的そうで、少し神経質そうにも見えるこの人は……確かイギリスのカッスルリー外相だ。会議では一番クレメンス様と意見が合っていたように思う。
 
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