元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
 
「大丈夫ですか?」

心配して背を撫でる私に少年は咳き込んだまま何度か頷き、やがて深呼吸を繰り返して息を整えた。

「今年は雨が多いからちょっと咳が出やすいんだ。でも大丈夫」

ようやく落ち着いた様子で笑顔を見せた少年に、私もホッと安堵の息を吐いた。

――それにしても。

「なんか、大きくなりましたね。僕、すっかり抜かされちゃった」

さすが成長期とでも言うべきか。背筋を伸ばした少年の身長は、優に私を超えていた。もうすぐ百七十センチに届くんじゃなかろうか。

「あれからどれだけ経ったと思ってるんだよ。ツグミが会いにきてくれない間に一年近く経っちゃったんだぞ。そりゃあ身長だって伸びるさ」

少年は唇を尖らせ拗ねたように言う。背丈はもう大人と変わらないのに、表情や言動は相変わらずなのが、なんとも可愛らしい。

「ごめんなさい。本宮殿には何回か来てたんだけど、あなたのこと探せなかったんです」

「ふーん、まあいいや。で、今日はどうしたの?」

「今日は陛下に官職就任のお礼を述べに謁見に来たんです。僕、宰相秘書官に就任したんですよ」

少し得意そうに言えば、少年は「えっ本当に!?」とこちらの予想以上に驚いた様子を見せた。

そして私の両肩を掴むと、相変わらず天使のようにきれいな顔を近づけて聞いた。
 
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