元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「宰相秘書官ってことは、もしかしてヴェローナ会議にも行ったの!?」
「え? ああ、はい、行きました」
「いいなあ! 羨ましい、僕も行きたかったあ!」
ヴェローナ会議に参加できたことは確かに光栄だけれども、そんなに羨ましがられるとは思わなかった。しかも官職に憧れているならともかく軍人に憧れている彼がどうして国際会議などに行きたがるのか、よく分からない。
すると彼は私の肩を掴んでいた手を離し、さっきまでの興奮した様子と打って変わって静かな声で言った。
「……会いたい人が、ヴェローナに来ていたんだ」
「会いたい人?」
いったい誰だろうと思ったけれど、彼は少しだけ切なそうな笑みを浮かべただけで、その人の名を語ろうとはしなかった。
……つくづくこの少年は不思議だ。本宮殿に住んでいるということは、王族に縁のある人物に違いない。ならば、本人が強く希望すれば国際会議に同行することも可能だったんじゃないだろうか。
むしろ彼の年齢ならば、国際情勢の勉強のために進んで連れていってもらえるはずだ。