元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!
「いけない、だいぶ遅くなっちゃった」
少年とおしゃべりをしていたせいですっかり時間を食ってしまった私は、急ぎ足で王宮内の宰相官邸に戻った。
少年の好奇心は尽きることがなく、私はあれからヴェローナ会議の話や途中で寄ったイタリアの街の話などをたっぷり語らされた。
そして最後にまた指切りをして、確実ではない再会の約束をして別れた。
(結局今回も名前教えてもらえなかったな……)
謎だらけの彼への好奇心はどんどん募っていくのに、その正体が明かされないことがなんとももどかしい。
けれど彼が話したがらないのには理由があるのだろうと思うので、追求はしないことにした。いつか彼の方から話してくれるのを待とうと思う。
「すみません、クレメンス様。ただいま戻りました」
官邸に戻った私はクレメンス様のいる執務室へ行って、本宮殿から戻った旨を報告する。
クレメンス様はすでに外出の準備を済ませ、窓際に立って私がくるのを待っていた。