スーパーガール
「はあ~、疲れた」


スポーツジムを出て、駅に向かう。

運動すると、いつも爽やかな気分になるのに、今日はテンションだだ下がりだ。


「あの新入り……まったくもう、失礼なやつめ!!」


間宮くんの発言を思い出し、ムカムカしてくる。

何が詐欺よ! いくら新人とはいえジムのトレーナーが、あの言い草はないでしょ。

私はあらためて不愉快になった。

でも……

あれが、一般的な反応だ。この怪力を披露すれば、たいていの男性はビビるだろう。


「学くんがそうだった。そして、たぶん棚橋さんも……」


とはいえ、筋トレや格闘技は私のアイデンティティだ。もしやめたら、私ではなくなるだろう。


「でもっ、このままでは彼氏ができない。ていうか、好きな人に告白すらできないよおお」


ワンルームに戻った私は、ジレンマに嘆きつつも、いつものように台所に立つ。そしていつものように、良い筋肉を作るためのメニューを考え、料理してしまう。

それが私の、アイデンティティだから。

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