スーパーガール
棚橋さんは手に持っていた書類を捨てて、万引犯に飛びかかった。パーカーを掴まれた万引犯はめちゃくちゃに暴れ、階段を下りようとする。


「くそっ、離せってば!」

「ダメだ、待ちなさ……あっ?」

「うわっ……うわあああっ!!」


野太い悲鳴とともに、二人の姿が階段下に消えた。ものすごい音を立てて。


「棚橋さんっ!!」


私は警備員を追い越し、階段を駆け下りた。

踊り場に散らばった漫画本。棚橋さんが男の下敷きになりながら、しっかりと捕まえている。


「棚橋さん、大丈夫ですか!?」


全体重を棚橋さんにかけている万引犯を引っぺがし、警備員に渡した。

苦しげに顔を歪ませる彼に呼びかけ、頭を打ってないか、どこか痛みはないかと確認する。

「だ、大丈夫……だけど、手首が、ちょっと……」

「手首?」


そっと左手首を持ち上げてみると、彼のうめき声が痛みを訴えた。
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