スーパーガール
「骨折してる……」


私は、両脚がずんと重くなるのを感じた。


「大変だ。すぐに病院へ行きましょう」


コミック売り場のチーフが横から覗き、棚橋さんに肩を貸す。棚橋さんは立ち上がると、


「万引きの人は……」

「警備員が連れて行きました」

「そうですか」


棚橋さんは安堵したのか、私と目を合わせて、にこりと微笑んだ。


「皆さん無事で、良かったです」

「棚橋さん……」


涙が出そうになる。そして、押し寄せる後悔。


(棚橋さんが怪我をしてしまった。私が、万引犯を捕まえていれば、こんなことには――)


「チーフ、私も病院に行きます。棚橋さんに付き添わせてください」

「いや、そんな大人数で行っても仕方ないから。それより、末次さんはコミック売り場を手伝って。あと、事務所に連絡を頼みます」

「あ……」


エレベーターの扉が開き、チーフと棚橋さんが乗り込む。

扉が閉まる直前、棚橋さんが怪我をしていないほうの手を振り、大丈夫だと合図した。


「私のせいで、棚橋さんが……」


事務所に戻る途中、涙が溢れて止まらなかった。
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