スーパーガール
「末次さん……」


きちんと説明できず、私はいつの間にか両手で顔を覆い、泣いていた。

彼を困らせるばかりなのに、どうしても言えない。

情けないやら、辛いやらで。


「わかった」

「……」


顔を上げると、棚橋さんは苦笑していた。私は涙を拭い、まっすぐに背筋を伸ばす。


「僕は、女性に泣かれると弱い……特に、きみのような子に泣かれると、困ってしまうんだ」

「……え」


私のような子? それは、どういう意味でしょうか。

と訊こうとするが、棚橋さんが本当に困った様子なので、口に出せなかった。


「きみに、家事をお願いするよ」

「いいんですか?」

「いいも何も、きみが望んだことでしょう」


私は笑顔になった。自分でもあきれるくらい、さっきまでの情けなさも辛さも忘れ、希望にあふれる笑顔全開で、棚橋さんと向き合う。


「ただし、無理はしないこと。僕のサポートをして、きみの生活に支障が出るようでは、本末転倒だからね」

「はいっ。無理はしません。でも精一杯頑張ります!」


選手宣誓のごとく、大きな声で約束する。

そんな私に、棚橋さんは困ったように、少し嬉しそうに笑いかけた。
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