スーパーガール
棚橋さんのアパートの手前に大型スーパーがある。思わぬ展開に混乱しながらも、私は彼と一緒に食品売り場を回り、晩ご飯の弁当と朝食の材料を買い物した。


「お菓子も買っていいですよ」

「ええっ? いえ、大丈夫ですので」

「そうですか? じゃあ、食品の会計が済んだら、着替えなど買いに行きましょう」

「は、はいっ」


片手が使えない棚橋さんは、財布からカードを取り出すのも難儀そうだった。私はそれを手伝ううちに、徐々に現実に立ち返ってくる。


(私、わかってなかった……)


家事を手伝う――半端な気持ちで考えていたことに思い至り、自分を恥じた。そして、彼との急接近を喜び、安易にときめいたことを恥じた。

棚橋さんの家事を手伝うのは、仕事の延長なのだ。


(でも、泊まるのって)


彼は抵抗がないのだろうか。気持ちの整理がつかないまま、買い物を続けた。
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