スーパーガール
「このアパートです」


棚橋さんの住まいは、12階建ての小ぎれいなマンションだ。

私はここへきて、いきなり緊張してきた。


(今夜、棚橋さんの部屋に泊まるんだ……まじで)


「さあ、どうぞどうぞ」


私の緊張を知ってか知らずか、彼は先に立ってエントランスに招き入れる。エレベーターで5階に上がり、降りてすぐのところにあるドアの前で立ち止まった。


「ここが僕の部屋です」

「な、なるほど」


何がなるほどなのか、自分でもわからない。本当に来てしまったのだ、彼の部屋に。

いざとなり、頭の中が混乱してきた。


やっぱりこんなのは良くない。いくらなんでも、男性の部屋に泊まるなんて。もしかしたら棚橋さんは、私を女と思っていないのだろうか。そうかもしれない。だけどこんなのは良くない。やっぱり帰ろうか。でも、それでは家事を手伝うという約束が果たせない。彼が怪我をしたのは私のせいなのに。


モラルと責任の狭間で、私の心は揺れに揺れた。
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