スーパーガール
クレープを買うためワゴンショップに並んでいた時、学くんが手に持っていた財布を、後ろにいた若い男が突然ひったくった。

脱兎のごとく逃げる男を私は迷わず追いかけ、跳び蹴りをかまして地面に倒し、襟首を締め上げた。


『何すんのよ、この泥棒。財布を返しなさい!』

『ぐええっ、苦しい……っ。助けてえ!』


私としては、ごく普通の行動だった。でも……


男から財布を取り戻し、急いで学くんのもとに走った。きっと、喜んでくれるものと思って。


『取り返したよ、学くん!』

『あ、ありがとう……』


学くんは、ひどく青ざめていた。そして、どこか具合でも悪いのと、心配する私の手を振り払い、


『僕、塾があるし、帰る』

『えっ? でも、今日は熟はお休みだって……』

『ごめん、さよなら!』
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