スーパーガール
手の届く距離
1LDKの部屋は、男性の一人暮らしにしては、まあまあ片付いていた。というより、全体的にすっきりとして、余分なものがない感じだ。

特徴的なのは、壁一面の書棚である。そこには文学の単行本や文庫本をはじめ、実用書、専門書、ムック、コミックまで、あらゆるジャンルの本が並ぶ。


(隣の部屋も本の倉庫なんだよね。さすが、全社一の読書家!)


私の読む本といえば、相変わらずスポーツ漫画、あるいはスポーツ雑誌である。

何という違いだろう。

書棚から漂う知的な雰囲気に、尊敬と憧れの気持ちを抱いた。


「熱気がこもってるな……エアコンをつける前に、空気を入れ替えますね」

「あ、はい」


彼はベランダ側の窓をからからと開けた。微かに風が吹き、部屋の空気を揺らす。


棚橋さんの匂いがする――


密かに喜びを感じながら、ふと思う。隣の部屋で寝起きするとはいえ、普段はこうして、同じ部屋で過ごすことになるのだ。

かなり大胆なシチュエーションといえる。


「今、お茶を淹れますので、適当にくつろいでください」


棚橋さんが台所に立とうとするのを見て、慌てて引きとめた。

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