スーパーガール
「へえ、嬉しいなあ。人にご飯を作ってもらうなんて、上京して以来だ」

「え……」


貴重かつ、意外な情報である。

ということは、ご飯を作ってくれるような人が、これまでいなかったわけで。


(棚橋さんは独身の一人暮らし。誰かと付き合っているとか、浮いた話は聞いたことがない。でもまさか、今までずっと彼女がいなかったなんてこと……)


にわかには信じがたい。

だって、こんなにも知的で優しくて紳士で、仕事ができて、部下に慕われて、モテそうな人なのに。

そもそも、結婚していないのが不思議なくらいだ。世の女性達は、見る目がなさすぎる。


「しかし、やはり三食は大変ですよ。末次さんの生活リズムを大切に、できる範囲でお願いします。でないと、僕が心苦しいので」


棚橋さんは言いながら、電子レンジでお弁当を温める。彼は仕事でも、部下に負担をかける人ではなかった。


「わかりました。私、絶対に無理はしません。そのかわり、棚橋さんも遠慮しないでください」

「うん。ありがとう」
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