スーパーガール
食事のあと、棚橋さんのリクエストに応えてコーヒーを淹れた。棚橋さんは食事後のひととき、コーヒーを片手に読書するのが習慣だという。

マグカップをテーブルに置くと、彼は礼を言ってソファにもたれ、すぐ本の世界に集中した。

私はじゃまにならないよう台所の椅子に移動し、バッグに入れてあった雑誌を読んだり、スマートフォンをチェックしたりした。


(棚橋さんの怪我が治るまで、ここでの生活が続く。着替えや何かは、時々アパートに帰って持ち出せばいいよね。自分のぶんの洗濯は、その時にしよう)


棚橋さんの洗濯ものと一緒に、女物の下着を洗ったり干したりするのは気が引ける。もし『彼女』なら問題ないだろうが、私はそんな、素敵な立場ではない。

だからこそ、意識してけじめをつけようと思う。泊まるのは隣の部屋とはいえ、一つ屋根の下だ。彼のもとで暮らすという幸運なシチュエーションに、甘えないように。
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