スーパーガール
「……さん、末次さん。こんなところで寝たら、風邪を引きますよ」

「へっ?」


がばりと顔を上げる。スマートフォンを操作したまま、うっかり眠ってしまった。


「すみません! つい、うとうとしちゃって」

「構いませんよ。でも、寝るなら布団のほうがいいでしょう。先ほど、軽く掃除機をかけて、布団も敷いておきました。今夜はぐっすりと休んでください」

「ええっ?」


私がうたた寝する間に、彼は隣の部屋を整えてくれたのだ。しかも片手で。


(まったくもう、怪我人の彼に世話をかけてどうすんのよ!)


呑気な自分が信じられない。それに、男性の部屋でうたた寝するなんて、緊張のかけらもない。恥ずかしすぎる。


「隣の部屋もお湯が出るので、風呂に入ってください。使い方がわからない場合は電話してもらえれば……」

「あっ」


玄関を出ようとして、棚橋さんに振り返った。
< 36 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop