スーパーガール
彼は振り向きもせず、出口に走っていく。まるで逃げるように。

その、必死に走る後ろ姿が、私の見た最後の学くんだった。

彼は夏休みの間に引っ越し、転校してしまったのだ。



幸せの絶頂から、真っ逆さまに転落。

人生初の失恋を味わった私は悲しみに暮れ、後悔に苛まれ、反省した。

要するに、学くんの優しさに甘えていたのだ。幸せのあまり、学くんが何もかも受け入れてくれるものと勘違いし、ありのままの自分を出し過ぎたのだ。

大の男に跳び蹴りをかまし、ゴリラのような怪力で締め上げる女子を見れば、誰だってどん引きするだろう。


『失恋して当然だよお………………』




あれから九年の歳月が流れた。

私、末次《すえつぐ》奈緒は二十歳になり、大学で運動科学を学びながら、都内に本部を置く大型書店の企画部でアルバイトをしている。
< 4 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop