スーパーガール
「さっすが、棚橋さん。よし、今日も頑張るぞー!」


布団を片付け、顔を洗ってから、昨日買ってもらった着替えを身に着けた。Tシャツとパンツという色気のない格好だけど、動きやすい。


「それにしても、本当に本が好きなんだなあ」


布団の周りも本が山積みだったが、リビングもすごい。

壁際に大きな書棚が立ち、しかも、ぎちぎちに本が詰まっている。

部屋の中央には、小さな書棚が並び、歩く隙間もない。


「電子書籍に切り替えれば、かなり省スペースなのに」


でも、棚橋さんには紙の本が似合う。コーヒーを手に本を読む姿こそが、私の理想である文学青年なのだ。

バッグを肩に、玄関へと歩く。廊下にまで本の山が続くのを見て、ふと、ため息が出てしまった。

文学青年に憧れる私にとって、棚橋さんは理想的な男性。でも、こんなにも大量の本を目にすると、漫画や雑誌しか読まない自分など価値がないように思えてくる。

彼女になるなんて、到底無理な話ではないか。それ以前に、本当の姿を知られたら、嫌われてしまうだろう――学くんのように。


「あー、もう。そんなこと考えてる場合じゃない!」


ネガティブな感情から逃げるように、急いで玄関を出た。
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