スーパーガール
棚橋さんは昨夜、いつでも出入りできるようにと、私に501号室の鍵を預けた。

カードキーで開錠しながら、少し心配になる。

いくら私が生活のサポートをすると言っても、こんな簡単に鍵を預けるなんて、信用しすぎでは?

職場で見る彼はしっかり者で、あらゆる面できちんとしている。それなのに、ちょっと呑気な気がした。


「なんて……そういう私も、棚橋さんのアパートで寝泊まりしてるし。お互い様かも」


普通の女子なら、こんな大胆なシチュエーションは無理だろう。

どんな紳士な男でも100パーセント信用などできない。相手が好きな男性であっても、恋人でもない人の部屋に泊まるのは危険だ。

私の場合、『男に負けない腕力』という悲しい自信があるから、できることなのだ。


(もし万が一、億が一、棚橋さんに襲われても……勝つことが可能だもの)


台所に入り、朝食の準備を始める。私は朝からたくさん食べるけど、棚橋さんは小食かな。スマートだし、余分な脂肪はつけたくないだろうな。

そんなことを考えながら目玉焼きを作っていると、玄関の開く音が聞こえた。振り向くと、清々しい笑顔の棚橋さんが現れる。


「ただいま。今日もよく晴れて、暑くなりそうだよ」

「……あ、お、お帰りなさい」


職場を離れた棚橋さんは、呑気と言うより、天然なのだ。

親しみのこもる挨拶に戸惑いつつ、私は幸せを感じるのだった。
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