スーパーガール
私と棚橋さんの半同居生活は順調に続いた。

介助という慣れない作業が何とかなったのは、私がスポーツ学部の学生だったことが大きい。

骨折など負傷したアスリートをサポートする講義や実習を受けたことがあり、それが役に立った。

また、実際に介助することで、講義の内容をより理解できるため、勉強にもなる。

でも、私が何より嬉しいのは、棚橋さんと親しくなれたこと。生活をともにすることで、これまで知らなかった情報を得ることができる。

例えば、彼の実家は岐阜県にあり、家族は両親と弟が一人。大学進学時に上京したことなど、個人的な話を聞けた。

好きな本、好きな食べ物、好きな音楽など、趣味嗜好についても。

憧れの人に近付きすぎると幻滅するというが、彼の生の姿は、私をよりいっそう夢中にさせた。理想を壊されることなく、それどころか、新たな魅力を発見したりする。

私は充実している。幸せなのは間違いない。

ただ、この生活には妥協点があった。

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