スーパーガール
秋の気配
「棚橋さん、結果はどうでしたか。先生は何て?」


診察を終えて外来の待合室に戻った棚橋さんに、私は駆け寄った。

彼はにこりと微笑み、


「もうお昼ですし、お店に入りましょう。手首の状態については、落ち着いてから話します」


右手で窓の外を指差した。通りの向こうに、病院の帰りにいつも立ち寄る喫茶店がある。


「わ、わかりました。すみません、つい焦ってしまって」

「いえいえ、心配してくれてありがとう」


棚橋さんが骨折してから一か月が経つ。

今日は通院の日。

最初の診断で完治までにかかるとされた5週間目に当たる。患部をレントゲン撮影し、経過が良好なら、ギプスが近いうちに外される予定だ。


私達は連れ立って病院を出た。

9月の街は真夏のように明るく、気温も高い。だけど、どこか秋の気配がある。季節は、確実に過ぎていくのだ。


喫茶店に入ると、冷風が心地良かった。奥の席に座り、棚橋さんと向き合う。


「末次さんは、いつものオムライスですか」

「はい。棚橋さんも、いつものナポリタンにしますか」

「そうですねえ。今日はきみと同じものを頼もうかな」

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