スーパーガール
店員を呼び、オムライスを二つ注文する。棚橋さんは椅子の背にもたれると、ふうっと息をついた。

なぜため息を?

診察の結果が思わしくなかったのでは……私は不安になるが、彼はすぐに微笑んでみせた。


「経過は良好、癒合も正常でした。明後日、ギプスが外れます。その後は作業療法士によるリハビリ指導を受けて、動作の感覚を戻していくという段取りになりました」

「そうなんですか。良かった!」


ようやくギプスから解放されるのだ。暑い時期に、腕をがっちり固められた姿は、見ていて辛かった。

何より、完治することが嬉しい。私は単純に喜び、笑顔になるが……


「あの……棚橋さん?」


なぜか、彼は浮かない様子だ。怪我が早く治るのを願っていたのに。


「どうかされましたか。何か、気になることでも?」


患部に違和感があるとか。まさか、実はまだかなり痛いとか?

心配になり、彼の表情と、ギプスを撫でる仕草を交互に眺めた。


「いえ、そうではありません。ただ、ちょっと……」

「?」


棚橋さんは、私を見つめた。

気が付きませんか?

とでも言いたげな、強く訴えるような眼差しで。
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