スーパーガール
「お待たせしました。オムライス、お二つです〜」


店員が来て、棚橋さんは目を逸らした。顔が赤らんで見える。


「手首の具合が悪いですか? 炎症があるとか」

「ああ、いえ、何でもありません。やっとギプスが外れると思うと感無量で、はは……オムライスも美味しそうですね」


不自然な態度は、棚橋さんらしくない。

私はオムライスを食べながら、注意深く彼を観察した。骨折は後遺症に悩まされる場合があり、油断は大敵なのだ。

しかしそれからの棚橋さんは、いつもどおりの落ち着いた様子に戻った。食欲もあるようなので、ひとまず安心する。


(ああ……それにしても、もう終わりなんだな)


覚悟はしていた。

棚橋さんとの半同居生活が、骨折の完治とともに終わりを告げるのを。

幸せいっぱいの日々と、いよいよサヨナラなのだ。


(ううん、違う。治ったことを素直に喜ばなくちゃ。私のせいで、骨折したのだから)


この一か月、棚橋さんの生活をサポートしてきた。行き届かない部分があったと思う。

でも彼は、私が手伝うたびに「ありがとう」と言ってくれた。

責任感だけでなく、下心有り有りの私なのに、純粋に感謝してくれた。

彼にとって私は、ただのバイト学生。わかっているけど、時々私は、純粋な感謝を愛情と勘違いしそうになった。
< 46 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop