スーパーガール
それは、どこかで期待しているから――


「末次さん、大丈夫ですか?」

「えっ?」


ふいに声をかけられ、ビクッとする。気が付くと私は、すごい勢いでオムライスを頬張っていた。


「すみませんっ。お腹が空いてしまって、つい……」

「慌てると消化に悪いですよ。仕事に戻るのは2時の予定ですから、ゆっくり食べましょう」

「は、はい。ありがとうございます」


思いやりに満ちた、穏やかな口調。

棚橋さんの優しさに触れて、目の奥がじんとする。


「こんな時間を持てるのも、あと少しですね。寂しい、秋の訪れです」

「え……」


どういう意味だろう。

文学的表現を理解することができず、私は戸惑う。でも、「寂しい」という言葉の響きに、感じるものがあった。


(もしかして、棚橋さんも?)


二人で過ごす時間を、もっと持ちたいと思ってくれるの?

あらぬ期待を抱きそうになり、急いで打ち消す。そんなの、あり得ない。夏の終わりには誰だって感傷的になる。深い意味などない。

オムライスの残りを食べ終えた私は、水を飲んだ。

二人の時間が、一秒でも長く続くように。

こみ上げてくる寂しさと、涙と一緒に、ゆっくりと……
< 47 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop