スーパーガール
「あっ、『坊っちゃん』がある。この装丁、俺が持ってるのと同じだ!」


書棚の後ろから、畑山くんの高い声が聞こえた。彼があんな興奮した声を出すのは珍しい。

彼は棚橋さんと一緒に、文庫本を整理している。


「ああ、10年ほど前に発売された、限定版ですね」

「いいですよね、このイラスト。『坊っちゃん』は文庫本も全集も持ってるのに、思わず買っちゃいましたよ」


本が好きな人は、装丁にも詳しいようだ。話に入れない私はますます貝になり、書棚のこちら側でひたすら作業する。


「そういえば、前から聞きたかったのですが、畑山くんが文学を好きになったきっかけは何ですか」


棚橋さんの声が弾んでいる。

読書家の二人は、たびたびこうして文学話に花を咲かせる。三人でいる時は控え目だけれど、二人きりの時は、かなり盛り上がっているようだ。

正直、少し寂しい。

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