スーパーガール
「子どもの頃、親に文学全集を与えられたんです。初めは興味がなくて放置してましたが、ヒマでしょうがなかった日に、たまたま読む気になって、開いたページが夏目漱石の『坊っちゃん』だったんです」

「ほう、それで?」


棚橋さんは興味津々だ。

畑山くんの熱っぽい口調に釣り込まれ、私も耳を傾けていた。


「そしたら、思いのほか面白くて一気読みですよ。それをきっかけに漱石の作品を読み漁り、全集に収録された他の作家にも移行して、本を読む楽しさにはまったわけです」

「なるほど。『坊っちゃん』はいいですね。僕も何度も読み返しました。主人公の坊っちゃんも魅力的ですが、僕は山嵐が好きですね。人の好い豪傑というか、まっすぐな気性が良い」

「わかります。でもなぜか『坊っちゃん』というと、マドンナとか赤シャツがクローズアップされますよね。マドンナなんて、さほど目立った人物でもないのに」


(へえ、『坊っちゃん』って、そういう感じなのか。今度、読んでみようかな)


私は『夏目漱石』『坊っちゃん』という言葉を頭にインプットした。
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