スーパーガール
「えっとお茶は温かいほうがいいよね。ほうじ茶を作ってポットに入れていこう」


やかんを火にかけて、しばし一休み。

勝手知ったる棚橋さん家の台所を、何となく眺めた。


(こうして棚橋さんの部屋に出入りするのも、あと少し。本当に、あと少しなんだ……)


リハビリが完了するまで、家事を手伝う。それが終われば、職場の上司とアルバイトの関係に戻る。もう、先延ばしする理由がなかった。

胸がしめつけられる――


(だって、私では棚橋さんの彼女になれない。何か月もそばにいて、よーくわかったもの)


畑山くんのように、文学の話で盛り上がることもできない。読む本といえばスポーツ雑誌とスポーツ漫画。その上、一番の趣味は筋トレだ。

スポーツジムにはたまに通うだけだと、棚橋さんに言ってある。握力やベンチプレスの数字はもちろん内緒。それに、空手部のマネージャーだったという嘘も、そのままだった。
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