スーパーガール
「立派なんて言われると、かえって恥ずかしいな」


一瞬、真顔になった。私は、言い方が悪かった気がして動揺するが、彼はすぐに柔らかな表情に戻る。

しばし見つめ合う格好になり、私はもじもじして、それとなく書棚へと目を逸らした。


「た……棚橋さん。よく見るとこの書棚、手前に傾いてますね」


ふと、気付いたことを口にする。胸はドキドキしていた。


「うん。上の段に重い本を入れすぎたかな」


二人で話していると、反対側の壁際で作業中の畑山くんが口を挟んだ。


「それ、俺も気になってました。上の段が特に、耐荷重量を超えてる感じですよ」

「では、少し軽くしましょうか」


棚橋さんは腕を伸ばし、上段の本を引き抜こうとした。

しかし、ぎっしりと詰まっているためか、なかなか抜けず、書棚がガタガタと揺れるのみ。とてもやりにくそうだ。


「椅子を持ってきます」

「そうですね、お願いします」


部屋の隅に、テーブルと椅子のセットがある。椅子を持って運ぼうとしたその時、畑山くんの大声が響いた。


「棚橋さん、危ない!」


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